第5章 2020年代の運動 略年表(PDF)を見る(別ウィンドウが開きます)

 

情勢の特徴

 

安倍首相の退陣

 

 2021828日、安倍首相は突然、退陣を表明しました。持病の再発を理由としていますが、退陣の根底には、「安倍政治」があらゆる分野で行き詰まり、政権運営そのものが立ち行かなくなった実態があります。

 後継として成立した菅義偉内閣は、安倍政治を継承し、執念をもって戦争できる国づくりの改憲策動をより一層強めてきました。発足早々に日本学術会議会員6名の方の任命を拒否するという、これまでどの内閣でもなされなかった暴挙を行い、511日の通常国会では、憲法改悪をすすめるための国民投票法案、高齢者医療費2倍化法案を自民、公明、維新などの賛成多数で可決するとともに、同日、参議院内閣委員会・総務委員会ではデジタル関連法案も可決しました。また、新型コロナウイルス対策でも、東京オリンピックの強行で感染拡大を招き、病床のひっ迫で多くの感染者が自宅療養を余儀なくされるなど、科学を無視し、国民のいのちと暮らしを守ろうとしないその姿勢に国民的な批判が高まりました。

 支持率は下がる一方で、横浜市長選や北海道・長野・広島の参院・衆院の補選や再選挙でことごとく野党候補に敗北し、自民党内にも「菅首相では選挙をたたかえない」という空気が広がりました。支持率が30%を切った国民世論と「選挙の顔を変えたい」という党内不信の広がりで、菅政権は1年で終わり、岸田文雄氏が新首相に選出されました。

 

アベ・スガ政治を引きずる岸田政権

 

 「選挙の顔」を代えるや「就任わずか10日後」の解散、「解散4日後の衆院選告示」を強行しました。

 一方、野党は、国政選挙では初めて、立憲民主党と日本共産党が、政策協定、政権合意、選挙協力の3点で合意して政権交代を狙える体制が整いました。2015年以来積み重ねてきて市民と野党の共闘の大きな成果でした。

 この選挙は、安倍・菅政治からの根本的な転換を望む多くの国民から歓迎され、政権交代への期待が膨らみましたが、選挙結果はマスコミ挙げての異常な「総裁選報道効果が冷めないうちに」、そして「内閣のボロが出ないうちに」という党利党略で、「野党共闘の体制が整わないうちの抜き打ち解散」を行いましたが、現職幹事長の甘利明氏や元幹事長の石原伸晃氏などの党幹部を含め20議席減となりました。

 一方、選挙後に安倍晋三氏は最大派閥の「安倍派会長」に納まり、麻生氏は党の副総裁、安倍氏を信奉する高市早苗氏は政務調査会長として、岸田政権への政治的・政策的な影響力を強めています。

 岸田内閣の「新しい資本主義」という得体の知れない政策ネーミングが一人歩きしていますが、その実態は総裁選で掲げた「分配なくして成長なし」をいつの間にか「成長なくして分配なし」にすり替えています。56兆円近い大型経済対策を閣議決定したものの、その内実は本当に必要な人への支援が届かない「自公の参院選目当て」とも言える思いつきのバラマキ、医療体制の強化につながらない「コロナ対策」、個人情報紐付けのマイナンバーカード押しつけ、「経済安全保障政策」という名目の大企業優遇と7700億円もの大軍拡など、その基本はアベ・スガ政治と何ら変わりません。

 学術会議会員任命拒否はそのまま継続、モリ・カケ・桜の再調査は拒否、核廃絶条約には背を向け、締結国会議へのオブザーバー参加さえ拒否しています。

 さらに問題なのは「改憲」に対する前のめりの姿勢です。これまでの「憲法改正推進本部」を「憲法改正実現本部」に名称を変えて、自らの任期中の改憲をめざす姿勢を鮮明にしましたが、これこそ安倍晋三氏のねらいであり高市早苗氏を党政務調査会長に据えたねらいでもあります。

 

宮城革新懇の主な活動

 

 ロシアのプーチン大統領は、2022224日、ウクライナへの侵攻を開始し、貴国の多くの市民をはじめ、世界中の抗議の声を無視してウクライナ市民を殺傷しました。この行動は、「主権の尊重」「領土の保全」「武力行使の禁止」を義務付けた国連憲章を乱暴に踏みにじる暴挙です。さらに、また、プーチン大統領は、ロシアが核兵器大国であることを誇り、「攻撃されれば核兵器で応える」と言って、ウクライナを脅迫しています。この発言は、核兵器禁止条約が発効したもとでの国際世論に真っ向から挑戦するものでした。

 問題は、維新などの改憲勢力を中心に、プーチン大統領による核使用を示唆する発言を口実にした「核共有」の議論が声高に叫ばれていることです。宮城革新懇は、安倍政権時代から強まっている憲法改悪の策動を打ち破るため、2021年以来、憲法問題連続講座の取り組みを続けています。